Wispecsの技術

Wispecsの技術

哺乳動物のンパク由来のデバイスは、ウイルスの混在、免疫原性などのリスクが常につきまといます。我々は、安全な合成高分子、ポリアクリル酸(PAA)とポリビニルピロリドン(PVP)を主原料として、生体適合性の良い新しい組織接着デバイスの開発を行ってきました。
PAAは粘膜接着性の合成高分子材料として古くから知られており、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の材料として広く研究されてきました。また最近では、皮膚への強い接着性も注目され、パッチ材としての利用も多くの報告があります。
一方、PAAは高い水溶性を持つために、そのままでは基材としての利用が制限されます。水に不溶化、あるいは、水に膨潤はするが、溶解はしない(あるいは非常にゆっくりと溶解する)ように変成する方法として、ポリビニルピロリドン(PVP)との水素結合ゲルに着目しました。PAAとPVPはどちらも医薬品添加物、食品添加物として長く使用されている水溶性合成高分子です。これらを溶液中で混合すると、水素結合によって水に溶けない錯体を形成することが古くから知られています。しかし、PAAとPVPの溶液を単純に混合しても水に膨潤しない複合体が沈殿するだけで、接着性のゲルは得られません。
私たちは様々な手法を模索し、「固/液界面接触法」という非常に特殊な条件下でPAAとPVPを混合し、高度に膨潤したPAA/PVP複合体水和ゲルを得ることに始めて成功しました。
Wispecsとはこの「固/液界面接触法」によって調製された高分子複合体を表す登録商標です。
Wispecs技術はPAA/PVP以外の高分子複合体にも適応することが可能であり、従来水に溶けない高分子複合体の組み合わせから、水に高度に膨潤する新たな素材や生体接着性の高分子水和ゲルが得られています。
・Water-Absorbing Bioadhesive Poly(Acrylic Acid)/Polyvinylpyrrolidone Complex Sponge for Hemostatic Agents. Bioengineering 2022, 9, 755. DOI: https://doi.org/10.3390/bioengineering9120755
・Preparation of a Bioadhesive Poly(Acrylic Acid)/Polyvinylpyrrolidone Complex Gel and Its Clinical Effect on Dental Hemostasis. Gels 2022, 8, 462. DOI: https://doi.org/10.3390/gels8080462
・Bioadhesive and Biodissolvable Hydrogels Consisting of Water-Swellable Poly (Acrylic Acid)/Poly (Vinylpyrrolidone) Complexes. J. Biomed. Mater. Res. B Appl. Biomater. 2020, 108, 503–512. DOI: https://doi.org/10.1002/jbm.b.34407
・Bioabsorbable Bioadhesive Hydrogel Comprising Poly (Acrylic Acid) and Poly (Vinylpyrrolidone) for Adhesion Barrier and Hemostatic Device.MRS Commun. 2015, 5, 291–295. DOI: https://doi.org/10.1557/mrc.2015.14

PAA/PVP Wispecsの形態

PAA/PVP Wispecsの形態

PAAとPVPから固/液界面接触法で作成した水和ゲルを乾燥させると、透明なフィルム、またはスポンジ状のWispecs乾燥体が得られます。また、スポンジ状の乾燥体からは粉砕によって容易にフレーク状、粉末状の複合体が得られます。これらの乾燥体に水を加えると、瞬時に再び膨潤し、柔らかく透明な水和ゲルに戻ります。PAA/PVP Wispecsはこのようにして得られた、水、アルコールに膨潤する高分子複合体です。

スポンジ

フィルム

スポンジの走査型電子顕微鏡写真

PAA/PVP Wispecsの特徴

PAA/PVP Wispecsの特徴

PAAとPVPから得られたWispecsは次のような特徴を持ちます。

・主原料は医薬品添加物、食品添加物として認可された安全なもののみで、哺乳動物由来の成分は含みません
・水やアルコールを加えると瞬時に膨潤して柔らかく透明な水和ゲルとなります
・精製したゲルは皮膚、粘膜、歯、骨などの生体組織や金属、一部のプラスチックに接着性を示します
・乾くと容易に剥がせるため、剥離時の刺激は小さく押さえられます
・生体内では自然にゆっくりと再解離して元の水溶性高分子に戻ります
・原料は安定供給されており、特別な装置無しで再現性良く生産できます

Wispecsの医療機器への応用
一般商品への応用の一例として、PAAとPVPからなるWispecsの止血材、創傷被覆材への適応例を示します。

<止血効果>乾燥したフィルム状、あるいはスポンジ状のPAA/PVP Wispecsを出血している傷に当てると、体液、血液を吸収して瞬時にゲル化して接着し、傷口を塞いで出血を止める機能があります。この止血機能を利用して、現在金蘭兄弟有限会社から「パイテック・デンタル」の商品名で、抜歯後の止血材として商品化がされています。

<痛みの軽減>また、Wispecsのスポンジをすり傷や靴擦れ等に適応すると、貼った途端に痛みが軽くなります。 傷口が痛むのは、むき出しになった神経末端が空気や衣服に触れるためです。血液、体液で膨潤したWispecsの水和ゲルは傷口で露出している神経末端を優しく包みこみ、刺激を防いで痛みを軽減します。

<治癒促進>乾いたWispecsを傷に当てると、Wispecsは血液や体液を素早く吸収し、ゼリー状の水和ゲルとなります。この時ゲルの中には多くの血球細胞が入り込んできます。そしてこれらの血球細胞は、環境の変化で刺激を受け、傷の修復に有効な様々な成長因子などを分泌します。膨潤したWispecsのゲルはその内部にこれらのタンパクを保持して、創面にむけてゆっくりと徐放するために治癒促進効果が期待されます。

Wispecsの医療機器への応用
一般商品への応用の一例として、PAAとPVPからなるWispecsの止血材、創傷被覆材への適応例を示します。

<止血効果>乾燥したフィルム状、あるいはスポンジ状のPAA/PVP Wispecsを出血している傷に当てると、体液、血液を吸収して瞬時にゲル化して接着し、傷口を塞いで出血を止める機能があります。この止血機能を利用して、現在金蘭兄弟有限会社から「パイテック・デンタル」の商品名で、抜歯後の止血材として商品化がされています。

<痛みの軽減>また、Wispecsのスポンジをすり傷や靴擦れ等に適応すると、貼った途端に痛みが軽くなります。 傷口が痛むのは、むき出しになった神経末端が空気や衣服に触れるためです。血液、体液で膨潤したWispecsの水和ゲルは傷口で露出している神経末端を優しく包みこみ、刺激を防いで痛みを軽減します。

<治癒促進>乾いたWispecsを傷に当てると、Wispecsは血液や体液を素早く吸収し、ゼリー状の水和ゲルとなります。この時ゲルの中には多くの血球細胞が入り込んできます。そしてこれらの血球細胞は、環境の変化で刺激を受け、傷の修復に有効な様々な成長因子などを分泌します。膨潤したWispecsのゲルはその内部にこれらのタンパクを保持して、創面にむけてゆっくりと徐放するために治癒促進効果が期待されます。

Wispecsの特徴の説明の4項目

接着性

PAA/PVP Wispecsは、PAAとPVPの二つの高分子が部分的に結合し、非結合状態のカルボキシル基を多く有するため、生体組織の皮膚や粘膜、さらに金属や特定のプラスチック材料に強く接着します。

生体内分解性

カルボキシル基の水素結合に基づく複合体の場合は、膨潤したハイドロゲルが生体内に放置されるとカルボキシル基が徐々に中和され、二分子の間の水素結合が解離して元の水溶性高分子にもどり、溶解します。

柔軟性

Wispecsは水素結合、疎水結合などの物理結合で架橋したゲルであるため、注射針などを通して細長く変形させても再び大きなかたまりに戻り、皮膚、粘膜、漿膜などの組織に接着します。

Wispecsの展開

膨潤性高分子複合体ゲルであるWispecsは、新しい生体接着剤として外科的治療手法の可能性を広げ、また、安全な接着、粘着剤として食品や化粧品分野への応用が期待されます。

Wispecsの特徴の説明の4項目

接着性

PAA/PVP Wispecsは、PAAとPVPの二つの高分子が部分的に結合し、非結合状態のカルボキシル基を多く有するため、生体組織の皮膚や粘膜、さらに金属や特定のプラスチック材料に強く接着します。

生体内分解性

カルボキシル基の水素結合に基づく複合体の場合は、膨潤したハイドロゲルが生体内に放置されるとカルボキシル基が徐々に中和され、二分子の間の水素結合が解離して元の水溶性高分子にもどり、溶解します。

柔軟性

Wispecsは水素結合、疎水結合などの物理結合で架橋したゲルであるため、注射針などを通して細長く変形させても再び大きなかたまりに戻り、皮膚、粘膜、漿膜などの組織に接着します。

Wispecsの展開

膨潤性高分子複合体ゲルであるWispecsは、新しい生体接着剤として外科的治療手法の可能性を広げ、また、安全な接着、粘着剤として食品や化粧品分野への応用が期待されます。